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八重山教科書採択について(八重山毎日新聞8月26日)

http://www.y-mainichi.co.jp/news/18995/

揺れに揺れた教科書採択 狡猾な策を弄しすぎた協議会長

空を見上げると秋が近づいているからか、このところ羊雲が目につく。絵画的で心が癒やされる。詩的でさえある。ところが、羊雲の内実は、上昇、下降の気流が渦巻く乱気流だ。今回の教科書採択に似ている。

■ 協議なしの採択協議会
当初、教科用図書八重山採択地区協議会長のインタービューや説明を聞いていると、地上から見る羊雲のようにきれいだった。教科書採択の改革・改善と称して
進める手法は、因循姑息(こそく)を打破する旗手のように映った。若き教育長の躍如たる姿があった。だが、改革・改善が進み、その手法を問いただされると、それは実に矛盾に満ちていた。恣意(しい)的な手段を改革・改善とうそぶいていたということになる。

 行政における名称を簡単に考えてはいけない。そこには民主主義の根幹が蔵されているからだ。今は「採択地区協議会」を指す。まず十分に「協議」をしなければならない。つまり話し合いだ。「協議会」は何人かの委員で構成され、「会長」はその話し合いのまとめ役で議長になる。公平・公正で話し合いを進め、委員から信頼を得なければ務まらない。だが、今回議長はその態をなしていなかった。公人として、なぜそのような基本的なことをしなかったか。真摯(しんし)に考えなかったのか。事務局からの意見はなかったのか。市教育界のトップであるという思い上がりがそのまま居丈高になったのか。結局そのことが協議をないがしろにし、遠ざけた。その初動の誤りが今回の混乱の始まりである。

 改革・改善ならば、会長として大いに協議をしなければならないはずである。これを怠った。これでは独断的と言われてもむべなるかなである。あまつさえ不都合なことを隠して恣意的に動いた。狡猾(こうかつ)と言われても仕方のないことである。ある協議会委員からはこうした進め方に強い批判もあったが、これも無視した。

■市議会でどう説明するか
県教委の「指導」なら受け止める。「要請」なら拒否する。県教委が指導と言えないことを見越しての発言。指導なら市町教育行政への介入ーと問題視したかったからだ。調査員の推薦に上がらなかった教科書も対象にしての採択ーなどあまりの狡猾さだ。これでは、何のための調査員か。会長の独断専行を許した協議会委員の役割とはいったい何だったのか。

 会長がある特定の教科書を採択せんがために、自身に近い立場の者、あるいは通じた者を意図して委員に委嘱していたとするならば、単に恣意的ではすまされない。地位を利用した所行と言わねばなるまい。公平、公正を旨とする公僕の信用を失墜したことになる。
「歴史」教科書の採択で考えてみよう。帝国書院4人、育鵬社3人、東京書籍1人がその結果であった。育鵬社版は調査員の推薦にも上がっていない。全国でもわずかに7自治体でしか選定されていない。しかも学者から不備が指摘されている教科書だ。果たして社会科授業に精通していない委員が十分納得して採択に加わっただろうか。何らかの力学が働いたとしか思えない。

 石垣市議会は平成19年6月の第2回定例会で富里八重子議員(当時)から「(高校)教科書検定に関する意見書」が提出され審議している。「沖縄戦の歴史を正しく伝え、悲惨な戦争が再び起こることがないようにするため、今回の検定意見が速やかに撤回されることを求める」がその提出理由。文科省の検定意見を踏襲し編集しているのが育鵬社教科書である。意見書は全会一致で原案可決された。
 その意見書の中で賛成議員として中山義隆議員(現市長)も名を連ねている。それからして今回の騒動にもっと積極的に首長としての立場から発言してもよかったのではないか。今後、このことに関しての政治姿勢、市教育長との政治スタンスなどが問われよう。

■きょうから注目の採択審議
 23日の選定、答申を受けた3市町教育委員会は最終採択審議に入る。きょうは石教委と与教委で、29日は竹教委。果たして育鵬社の社会科「公民」が採択されるか八重山郡民はもとより全県、全国で注目が集まる。沖縄県民からノーを突きつけられている同じ育鵬社の「歴史」は協議会では選定されなかった。編集理念や方針を同じくする教科書会社の「歴史」は否とされ、調査員から推薦がなかった「公民」は可とされたのである。3教委でそれをどう判断するか。土俵を変えての判断に各教育委員は「沖縄の良識」全人格をかけて向き合ってほしい。
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