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文部科学大臣による竹富町教育委員会に対する是正要求に反対し、竹富町を教科書無償供与の対象とすることを求める声明

文部科学大臣による竹富町教育委員会に対する是正要求に反対し、竹富町を教科書無償供与の対象とすることを求める声明

1 文部科学省の竹富町に対する是正要求の方針
報道によると、文部科学省(文科省)は、沖縄県・八重山地区の中学校公民教科書の採択で石垣市及び与那国町と竹富町で採択結果が分かれたことについて、沖縄県教育委員会に対し、地方自治法に基づき、竹富町へ是正要求をするよう指示する方針を固めたとされる。下村文部科学大臣(文科大臣)も10月1日の記者会見で「政府内の協議がまとまり次第、直ちに是正要求を出したい」と表明した。
しかし、以下述べるとおり、かかる文科省の方針は断じて容認できない。

2 竹富町の東京書籍採択に違法性はない
文科大臣の上記是正要求は地方自治法245条の5第2項2号に基づくものであると考えられるが、同是正要求が許されるためには、市町村教育委員会が担当する事務処理に関し、法令違反があるか、著しく適正を欠き、かつ明らかに公益を害していると認められなければならない。
竹富町に関してはこのいずれにもあたらないことは明らかである。
そもそも、2011年8月23日の八重山採択地区協議会の審議では、現場の教員たる調査員の意見を無視し、協議会委員が「教科書を読んでいない」と発言するなど、実質的審議を尽くすことなく育鵬社版の公民教科書を選定する答申が行われた。そのため、竹富町教育委員会は、同採択地区協議会の選定手続きにおいて疑義があるとして、答申と異なる東京書籍の公民教科書を採択したものである。その後、同年9月8日には、同採択地区の全教育委員が参加して6時間近くに及ぶ協議が行われ、改めて東京書籍の公民教科書が採択された。同日に行なわれた協議は、形式的にも実質的にも教科書無償措置法13条4項が定める「協議」の実質を十分に備えたものである。竹富町教育委員会の中学校公民教科書採択はこの「協議」に基づくものであり、何ら違法性はない。また、文科省によって、現在竹富町は教科書無償化の対象から外されているが、竹富町は自ら採択した教科書を生徒に無償で教科書を配布し、生徒に経済的な負担をかけないように配慮をしているのであるから、不適正な点や公益を害するような点も全くない。
文科省は、これまで中学校教科書の採択権限は各教育委員会にあるとの立場に立っており、竹富町教育委員会の上記教科書採択についても、「地方公共団体が自ら教科書を購入し、生徒に無償供与することまで法令上禁止されていない」(2011年10月26日、中川正春文科大臣の衆院文部科学委員会での答弁)と表明してきた。文科省自身、竹富町教育委員会の教科書採択行為に違法な点や不適正な点がないことを認めてきたのである。

3 文科大臣による是正要求は違憲・違法である
国政上の政策は、様々な政治的要因によって左右されるものであるが、本来教育は、子どもの内面的価値に関する文化的営みとして、党派的な政治的観念や利害によって支配されるべきでない。そのため旭川学力テスト事件最高裁判決(1976年)でも、教育内容や方法に関し国家が何らかの基準を設定するとしても、教育における機会均等の確保と全国的な一定の水準の維持という目的のために必要かつ合理的な範囲でなければならず、誤った知識や一方的な観念を子どもに植え付けるような内容の教育を施すことを強制することは憲法26条、13条に照らし許されないとされている。
竹富町教育委員会が採択した東京書籍の中学校公民教科書は、全国的にも広く使用されている教科書であり、教育における機会均等や全国的な水準の維持という観点から見ても何ら問題ない。他方、文科大臣が是正要求によって竹富町教育委員会に採択をさせようとしている育鵬社の中学校公民教科書は、国民の権利や国民主権、平和主義など憲法に関わる記述などが一面的であるとして、厳しく批判されている教科書である。文科大臣の是正要求は、上記最高裁判例の趣旨からしても違憲であって、教育に対する「不当な支配」(教育基本法16条1項)にあたる可能性が極めて高い。
文科省は、地方自治法に基づき、竹富町に対する是正要求を行うとしているが、かかる是正要求が、地方自治法245条の5第2項2号の要件すら満たしていないのは前述のとおりである。
もともと、地方公共団体の自主性及び自立性に配慮し、国の関与は必要最小限度のものでなければならない(地方自治法245条の3)。これに加え、教育行政については、上記のごとく、教育に対する政治的な介入を抑止し、教育現場の自主性が尊重されなければならないという独自の要請がある。そのため文部科学大臣の是正要求も、「教育を受ける権利を侵害されていることが明か」な場合に行いうると地方自治法よりも必要となる要件が付加されている(地教行法49条)。竹富町教育委員会が採択した東京書籍の教科書が生徒に無償で配布されていることからして、教育を受ける権利の侵害がないことは明らかである。かかる点からしても文部科学大臣が竹富町教育委員会への是正要求を行うことなどできないのである。文部科学大臣が地教行法上の要件を考慮することなく、「地方自治法に基づき」是正要求を行うなどということは、地教行法が是正要求の要件を付加した趣旨を脱法的に潜脱するものである。したがって、文科大臣による是正要求は、法の求める要件を満たさず違法であって許されない。

4 竹富町を教科書無償供与の対象としなければならない
むしろ、竹富町を教科書無償供与の対象外としている文科省の措置こそ改められなけれ
ばならない。
憲法26条2項は国民に対し、子女の普通教育を受けさせる義務を課した上で、「義務教育は、これを無償とする」としている。現在、教科書の無償制は広く世界中の国で行なわれ、特に、我が国では学校教育法で義務教育における教科書の使用義務が掲げられ(34条、49条)、法制上、教科書は憲法26条2項「義務教育」の一内容となっている。
文科省自身、無償給与制度の趣旨を憲法26条の精神をより広く実現し、教科書が就学義務と密接な関わりがあることから授業料不徴収に準じ無償給与すべきであると説明してきた。現実にも1963年の教科書無償措置法制定以来、文科省が竹富町を対象外とするまで、無償措置を適用しなかった自治体は存在しなかった。教科書無償給与から竹富町を対象外としている文科省の措置は、憲法26条2項、及び、平等原則(憲法14条)および「その能力に応じて、ひとしく教育を受ける権利を有する」とする憲法26条1項に違反するものである。
自由法曹団は、全国で2000名余の弁護士が加入する法律家団体として、かかる違憲・違法な文部科学大臣の竹富町教育委員会への是正要求に反対し、竹富町を教科書無償給与の対象とすることを求めるものである。

2013年10月7日

自由法曹団
団長篠原義仁
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